『あやし』 宮部みゆき

あやし (角川ホラー文庫 126-1)  あやし

現代物のホラーも、時代物のホラーにも、

共通してよく思うことは、怖いということもあるけど、

悲しい話であったり、霊になったのが不幸な人物だったと感じること。

宮部さんのこの時代怪奇小説『あやし』は、人情物にも感じられるので、

怖いというより、悲しい。

角川ホラー文庫から出てるので、ホラーのイメージで読み進めていたけど、

ホラーではなく、怪奇。あるいは奇妙。

時代物で怪奇になると、どことなくだが、

実際に昔あったとしてもおかしくなさそうに思えてしまう。

まだ、機械に支配されていない、

それこそ妖怪でも潜んでいそうな、世界。

「あやし」に一文字「か」を足すと「あやかし」になる。

その意味は、不思議なこと、またはそのもの。そして妖怪。

だけど、やっぱり小説からイメージされるのは、

「妖怪」というより「幽霊」

ようするに、現代に作られた「怪談」

でも、昔聞いた怪談そのもののように感じられた。