『あやし』 宮部みゆき
現代物のホラーも、時代物のホラーにも、
共通してよく思うことは、怖いということもあるけど、
悲しい話であったり、霊になったのが不幸な人物だったと感じること。
宮部さんのこの時代怪奇小説『あやし』は、人情物にも感じられるので、
怖いというより、悲しい。
角川ホラー文庫から出てるので、ホラーのイメージで読み進めていたけど、
ホラーではなく、怪奇。あるいは奇妙。
時代物で怪奇になると、どことなくだが、
実際に昔あったとしてもおかしくなさそうに思えてしまう。
まだ、機械に支配されていない、
それこそ妖怪でも潜んでいそうな、世界。
「あやし」に一文字「か」を足すと「あやかし」になる。
その意味は、不思議なこと、またはそのもの。そして妖怪。
だけど、やっぱり小説からイメージされるのは、
「妖怪」というより「幽霊」
ようするに、現代に作られた「怪談」
でも、昔聞いた怪談そのもののように感じられた。