『六の宮の姫君』 北村薫

六の宮の姫君 (創元推理文庫)  六の宮の姫君

高校生だった時、文学作品においての

作者や時代の背景も踏まえて読むと、

面白いということを国語の授業で知った。

その授業の感想でも、そのようなことを書いた記憶がある。

知ったのだけど、高校生活では本を結局ほとんど読まず、

大学生になったら、そのことは忘れていた。

しかし、本の楽しさを知った。

次々と読みたいものが出てきて、一つの本の背景を調べる余裕はなく、

書かれていることだけを楽しんで、読書をしていた。

この本を読んで、まずそんな高校時代に習ったことを思い出した。

僕は、文学部でもなければ、古い文学作品もほとんど読んでない。

有名作家とタイトルくらいは、本屋バイト経験があるので知ってるくらい。

だけど、芥川龍之介。そして菊池寛

とりわけ、この二人の作品を読みたいと思わせる話だった。

今回の謎は、芥川龍之介が自作の『六の宮の姫君』を、

あれはキャッチボールのようなものだと語ったこと。

さらにそこから芋づる式に謎は連なっていく。

このシリーズでは探偵は円紫さん。

でも今回謎を解くのは「私」

まさしく私の探偵物語

北村さんの『六の宮の姫君』も、

キャッチボールのような経緯で生まれたものだと感じた。

実際には、著者の卒論が元だというのだけど、

芥川龍之介の『六の宮の姫君』がなければ、

そこから何かを得なければ当然生まれるはずもない。

芥川版の『六の宮の姫君』もあるものから、何かも得て作られた。

作られる過程で、様々な要因が重なっていく。

そして繋がっていく。

遠い過去と、今と呼べる現在、そして未来へと。

誰もが毎日、何かを失い、

何かを得ては生きていく

芥川に関する謎は、事件性はないのに、すごい刺激的だった。

だけど、やっぱり「私」の日常。

これがとても優しさに満ちていて、読んでいて安堵できる。

作品の空気が良いと感じられる。

そしてやっぱり、成長の物語。

「A GATEWAY TO LIFE」意味は「人生の門出」

横文字で付けられたこの本の、もう一つのタイトル。

私の物語としてピッタリだと感じた。