『ターン』 北村薫

ターン (新潮文庫)  ターン

時の迷子という言葉が浮かんできた。

交通事故にあい、気づいた時は昨日。

時は明日に向かわず、昨日が繰り返されていく。

しかも自分以外、人がいない。

時と人シリーズの2作目。

時間というのは、みんな同じように流れていて、とても平等。

でも、その流れが狂ってしまうと、これほど残酷なことはない。

北村さんの文体が優しいのが、唯一の救い。

救いというと、中盤から救いになるものが現れてくるけど、

最初から、主人公に問いかけていた“声”がすごい救いに思えた。

でも、その“声”が、時間のターンと同じくらいの謎になっている。

本当の一人ぼっちというのが、どんなに辛いものか。

何をしても、明日には全てが戻っているというのが、これほど儚いものか。

足掻いて、諦めて、希望を見て・・・

主人公を、応援したくなる話だった。