『リセット』 北村薫

リセット (新潮文庫)  リセット

北村薫の「時と人」シリーズ3部作の最終章。

時は残酷でもあるけど、同時に優しい。

前2作より救いに富んでいて、時がとても寛容に刻む。

本当にこれは奇跡の話で軌跡の話。

人が歩いたその道の果てに何が待っているのか。

想像することはあるだろうが、実際に訪れることなどないこと。

時間の神様の、気まぐれが優しい。

でも、同時に残酷のようにも映る。

この本を読んでると自分の人生を振り返ってしまう。

愛されていたなとか、辛かったなとか、とにかく色々あった。

もう戻れない、決して手に入らないものがある。

そんなこと思ってもどうにもならないことくらい、もう知っている。

本文でも同じようなことが書いてある。

だからといって、何もかも、どうでもいいことと思わない。

だからこそ、なんだと書いてある。

きっと、だからこそ、なんだろう。

だから、気づくことができる。

大切にすることがあるとか、生きてく理由とか、やるべきこととか。

余計なものを捨ててしまれば楽なんだろうけど、

捨ててしまったら、もう今の自分にはなれないだろう。

とにかく、その箇所は妙に胸に引っかかった。

たぶん一生ついて回ることがある。

でもそのことに囚われたりできない、

けど忘れたり、どうでもいいとか思えない。

忘れたい、あきらめたい、だけど……

そんな人の、もう手に入らないもの、

その過去の輝かしいばかりのもの、あるいは辛いもの

そんなものが戻ってくる奇跡の話であり、

人の生きた一生の奇跡の話が『リセット』なんだと僕は思う。

たぶん一言で言えば、運命だったんだろう。

シリーズ過去作品感想リンク

『スキップ』『ターン』