『暗黒童話』 乙一
読み終えたとき感じたのは、健気な少女の成長物語だということだった。
しかし、タイトルは暗黒童話。
読むには、それなりの覚悟が必要かもしれない。
奇妙で、不思議で、残虐で、なんとも不可解な話なんだけど、
とても切ない話だった。
それでも、成長物語と感じられ、救われた感じがしたのは、
ラストがとてもさわやかで、すがすがしかったからだ。でも、少し切ない。
そこに至るまで、ひねくれたかのような物語だったので、
こうもストレートに来られて、多少驚いたけど、
少年、少女の漫画のような王道的にも思えるラストで気持ち良かった。
とはいえ、残虐な描写が、僕には耐えられず、
かなりそういう部分は走り読みしてしまった。
ああ…ダメだ。これは無い。
と、思いながらも続きが気になってしまうのは、
良い文章を書くからだと思う。少なくとも僕にとっては。
片目を移植され、記憶を無くした元優等生の少女が、
移植された片目の映し出した、誰かの風景を追っていく物語。
自分探しなのか、ただ、記憶のない自分が持っていないもの。
誰しもが持っている過去を、他人のものだとしても追っているだけなのか。
何か、人の本能的なモノを感じられた。
過去を、思い出を誰しも必要としているんだと。
そして、それは自分を認めるために必要なんだろうなと。
少女は、記憶をなくし、以前の自分と変わってしまったことで、
他人の顔色ばかりを気にしていた。
でも、それより自分が自分を認めるということが、
何より大切だったんだろうなと、僕は思った。