『花嫁化鳥』 寺山修司

寺山修司の本は、これで2冊目になる。 寺山さんこそ、民俗学的見地からの視点を持っていない、と語っているが、 様々な土地を回り、日本の古き風俗、文化、伝承を引き出していくことは ジャンルでいうと、僕には民俗学としか言いようのないものだった。 たとえ、その見地が無くても、その各場の地誌と成りえるものだった。 そして昨日テレビで見た、金田一耕助が、 ふらりと寺山さんの頭に降りてきて 彼が見地、いや推理するということなんかも、おもしろい視点だと思った。 風葬大神島 比婆山伝綺 闘犬賭者考 浅草放浪記 裸まつり男歌 馬染かつら 花嫁化鳥 くじら霊異記 きりすと和讃 筑豊むらさき小唄 こんな小見出しに別れて、本は成り立っている。 どこの世界でもそうだが、古きことには 現在では考えられないことが多くある。 そして、考えられないことが広く伝わったり、 広くなくても、その小さな共同体では固く信じこまれた。 どの話も、今となってはそんな迷信と多くの人が吐き捨てることばかり。 考えようによっては、すごい呪術的だ。 なぜ、そんなことが信じこまれたのか、 どうして今まで、伝承として残るのか、存在するのか、 未だに、必要とするのは何故か。 寺山さんは、その土地土地では通り過ぎるよそ者でしかなく自分は
ただの現在にすぎなかった
と語っていた。 ただそこにあるだけのものでしかない。 過去の因習に囚われたその村では、一人浮いたもの。 風葬大神島で出てくる、民宿しながら研究して 島民と同じ扱いを受けているという 鎌田女史のようになればいいのだろうか。 フィールドワークの重要性は確かにあると思う。 だが、ただ現在としてのみ存在するという、 ある種、儚げなこの表現が、 この本全体の寺山さんや、各人物の悲しげな事柄を よく表していると感じた。
花嫁化鳥
花嫁化鳥
posted with amazlet on 07.01.06
寺山 修司
角川書店
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4 新しい世界が開きます
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