『インシテミル』 米澤穂信
ポップな表紙から、軽めで若者向けのミステリーを思い浮かべるも、
想像以上に本格的な行動心理学的実験であり、ミステリー。
読んでみると、古典ミステリー+αで、帯に書いてあるように
私たちのミステリー
といえるような、新しいミステリーだった。
時給1120百円という怪しげな求人情報。
お金、興味本位など、そのバイトに様々な思惑で集まった12人。
バイト内容は、ある場所にある条件化で、24時間拘束され、
その様子を全て監視されながら生活するというもの。
さらに、その場所では刑法が適応されず、
外部とは、完全にシャットアウトされる、
いわゆるクローズドサークルもの。
そんな状況化で、殺人を犯したもの、殺人を暴いたものなどには、
金額のボーナスがされる。
心理的に追い込まれた人間の苦悩や葛藤。
そして、ついには起こってしまう殺人事件。
驚いたのは、主人公の豹変っぷり。
当初、頼りなかったというか楽観的すぎて大丈夫かと心配だったが、
こうも変わるとは。
もう一つおまけに驚いたのは、後半での展開。
こういうケースもあるという。
普段ミステリーの謎解きは、あまり考えず物語に没頭してしまう僕でも、
ついつい考え込んでしまうくらい、飲み込まれた。
それに1日で読んでしまうほど、物語に”イン”シテマシタ。
ついでに、インシテミル=incite millと書くよう。
殴りあいとか、施設・機関などを刺激する意味があるとか、ないとか。
英語はよくわからないが、色々意味がありそうだ。